相続・遺言等に関する質問
区分 | 質問&回答 | 参考資料 |
相続に関する相談先 | Q: 相続は誰に相談するのが良いですか A: お客様の相続で最も中心となる業務を得意としている士業に相談するのが良いと思います。 相続に係る手続きはお客様ご本人で実施するほか、弁護士、司法書士、税理士、行政書士が代行して実施出来ます。ただし法律によって夫々できる業務と出来ない業務が厳しく規定されていますので、様々な業務が混在している相続手続きにおいては一つの士業だけで全てが完結することはできません。したがってそれぞれの士業で相互に連携して相続業務を進めていくことになります。 例えば、相続において係争事案がある場合は弁護士の先生が良いでしょう。複数の土地や建物等を相続する様な登記案件が多い相続の場合は不動産登記が出来る司法書士の先生が良いと思います。 また、相続した農地の転用等や事業承継の様な許認可申請が必要な場合、又は各種契約書等の作成が多い場合等には、許認可申請業務が認められている行政書士にご相談されるのが良いと思います。 相続税等の相談が多い場合は税理士の先生が良いでしょう。 費用に関しては共通する業務はどの士業にお願いしても大きな差はないと思いますが、それぞれの士業が得意としている分野の業務の難易度によって差が出て来ると思います。 何れの士業の先生に相談されても、相互に連携を取って手続きを代行致しますので、先ずはお気軽にご相談ください。 | |
相続の発生 | Q: 相続が発生する要件 A: ①被相続人の死亡、②失踪宣言を受けた時です。 失踪には、生死が7年以上不明な場合の「普通失踪」と事故等で生死不明が1年以上続いた場合の「特別失踪」に分かれますが、単に「生死不明が続いている」だけでは「失踪」とは認められません。利害関係者(家族等)が家裁に対して「失踪宣言」の申請をして、それが認められて初めて「失踪=死亡」と見做されますので、注意してください。 なお、「普通失踪」は7年の失踪期間が経過したその時に、「特別失踪」は事故等から1年経過した時に「死亡」と見做されます。 | 失踪:死亡の可能性が高いが、それが確定できない場合に「死亡の効果を擬制」する ※利害関係者の請求が必要 普通失踪:生死が7年以上不明の場合(7年の執行期間満了時) 特別失踪:事故等の特別な危機に遭遇した者の生死が1年以上不明な場合(危難が去った時) |
相続手続き | Q: 相続が発生した時の必要な手続きは何ですか A: 先ずは遺言書の有無の確認から始まり、相続人及び財産を確定する必要があります。これらの基礎調査結果に基づき、その後の相続方式や遺産の分配方法等が決まってきます。 | 死亡届(7日以内)遺言書の有無確認相続人の確定遺産(財産)の確定(放棄する場合は家裁への申立て)相続執行手続き |
相続に関係する手続きとその期限 | Q: 相続手続きに何か期限はありますか A: 主要な手続きとして、まず最初に来る期限は、相続方法の決心です。特に「単純承認」以外の方法を選択する場合は相続開始から原則3か月以内に手続きが必要になります。そして4か月以内に所得のかかる準確定申告、10カ月以内に相続税の納付申請手続きが必要になります。 | ①3か月以内に相続の方法を決定 ※3か月経過後は相続放棄が不可になる ②4か月以内に準確定申告、消費税納税 ③10カ月以内に相続税、特定農地の納税猶予手続き、遺留分侵害額請求 |
相続業務の執行 | Q: 相続が発生した場合、どのような手続きが必要ですか A: 一般的に以下の様な流れで手続きが行われます。 相続の状況によりますが、手続きが多く煩雑になる可能性がある場合等には、状況に応じて適切な専門家に委託すると安心です。 先ずは遺言書の存在の有無を確認します。遺言書が見つかれば、遺言書のとおり手続きを進めることになります。遺言書が無いことが分かった場合は次項以降の手続きを踏んで相続手続きを進めることになります。次に基礎調査(相続人調査、財産調査)を行って、推定相続人及び相続財産を明確にした上で「相続人関係図」及び「財産目録」を作成します。これらの資料は、その後の相続手続き業務を円滑に実施する上で必要となります。相続人及び分割する遺産が確定したところで、遺産分割協議等により相続の方法及び相続財産の分配方法等について協議し決定します。全員の合意が整ったところで「遺産分割協議書」を作成します。もし協議が整わなかった場合には家裁等に調停を申し立てることになります。遺言又は遺産分割協議書もしくは家裁の調停・審判に従い遺産分割のための各種手続きを執行します。最後に、一通りの手続きが完了したところで依頼した士業に費用を支払い(清算手続き)、相続執行業務は完結します。 | |
遺言調査(必要性) | Q: 遺言書の調査はなぜ必要ですか A: 遺言書は被相続人の相続財産の分配に関する意思表示であり、相続人としてその意思を実現することが最優先にすべき事項です。しかし、被相続人が遺言書を作成しているにも関わらず、その存在を誰も知らなかったために被相続人の意思とはかけ離れた相続になってしまうことは不幸なことです。 また、遺言書があれば相続をめぐる諍い等の発生も回避出来る上に相続に係る各種手続きも円滑に進められます。 そのためにも、相続が開始された場合、先ずは遺言書の有無を確認する必要があります。 | 遺言書は被相続人の相続財産の分配に関する意思表示で最優先すべき事項 遺言書があれば、遺言書の内容に従って財産を分配するだけで煩わしい手続き(遺産分割協議等)が必要無くなる |
遺言調査(調査内容) | Q: 遺言書の調査とはどの様な調査ですか A: 遺言書の調査では、遺言書の存否を確認します。 確認の手段としては、次のような方法があります。 相続人代表者等から遺言書の有無について聞き取り遺言書保管所への問合せ公正証書遺言書の検索 | 相続人代表者等から遺言書の有無について聞き取り遺言書保管所への問合せ 公正証書遺言書の検索 |
推定相続人調査(調査内容) | Q: 推定相続人の調査とはどのような調査ですか A: 被相続人及び推定相続人の戸籍を丹念にひも解いて相続権を有する者を確定させるための地道で根気のいる調査です。相続手続きで必要になる相続関係を証明する資し料として、調査の結果を相続関係説明図に書き起こします。 | 被相続人及び推定相続人の戸籍から相続権を有する者を確定し、相続関係説明図を作成相続関係説明図を基に法定相続情報一覧図を書き起こして認証手続きを実施 |
推定相続人調査(必要性) | Q: 推定相続人の調査はなぜ必要ですか A: 推定相続人を調査して相続関係説明図を作ることで確実な遺言書を作成することが出来、同時に遺言者死亡後の検認及び遺言執行を円滑に実施できるようになります。 もし、相続人調査を実施しないで相続人に抜けた状態で相続を進めた場合、相続財産の分配に関して後々の紛争の火種となるばかりか、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で、遺産分割協議書の内容も無効となる恐れがあります。稀にではありますが、調査結果から予期しない相続権者が現れることもありますので、やはり確実な相続を行う上でも相続人の調査は大切になります。 また、その後の相続手続きにおいても金融機関、法務局、家裁等で相続関係を証明することが必要になるので相続関係説明図を作成する必要があります。 | 相続人に抜けが生じた場合、相続財産の分配に際して紛争の火種となる遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で、遺産分割協議書の内容が無効となる |
相続人の要件 | Q: 相続人になれない人は誰ですか A: 相続人になれる人は、簡単に言えば「法律上の配偶者」と「自分の血族(実子、親、兄弟姉妹)」と思ってください。 したがって、どんなに仲の良いご夫婦であっても内縁関係の場合は法律上の配偶者ではないので相続人になれません。 また、再婚された相手に所謂「連れ子」がいた場合も、実の血が繋がってはいないので相続人にはなれませんので注意してください。逆に、離婚した相手側にいる実子(血が繋がった子供)は、いくら疎遠であっても相続人になります。 その他、相続に関して悪事を働いた者(欠格者)と非行行為を繰り返す等、被相続人が財産の配分を拒否し家裁が認めた者(廃除)も相続権はありません。 | ①配偶者 ※内縁は相続人になれない ②子(嫡出子・非嫡出子、養子、胎児含む) ※自分の子供は親権の有無を問わず相続人となる ※再婚の場合、配偶者の連れ子は相続人にはならない ⇒遺言(受遺者:遺贈)、養子縁組(人数制限はあるが節税効果あり、孫は2割増し)、連れ子の親が先に死亡している場合(代襲)は相続人になれる ③直系尊属 ※①や①の孫又は曾孫がいない場合にのみ相続 ④兄弟姉妹 ※①や①の孫・曾孫、②がいない場合にのみ相続 ※④の代襲は甥・姪まで(甥・姪の子は相続不可) ※留置分限債権者は相続人の④を除く①②③(意思表示だけで当然に効力発生) ※相続人不在の場合:相続人の捜索手続きと併行して家裁が相続財産管理人を選任⇒捜索の結果、相続人が不存在⇒特別縁故者に承継or国庫(家裁は「特別縁故者」の請求があった場合に相続子を認める) |
相続人になれない者 | Q: 相続が出来ない人は誰ですか A: 被相続人よりも前に死亡している人及び相続の欠格と廃除の対象者は相続できません。 「欠格」は、相続上の犯罪行為を行った全ての推定相続人は当然(自動的)に対象になります。欠格の場合は、資格の回復はありません。 「廃除」は、被相続人の生前、非行行為等があり財産をあげたくない人が居た場合に家裁へ請求することで効力が発生します。なお、「廃除」の場合、一旦認定されても「廃除取り消し請求」によって相続人として資格を回復することも可能です。 | 欠格対象者 :全推定相続人 遺留分を有する推定相続人(配偶者・子・直系尊属) 欠格の原因 ①相続上の殺人を犯した者(過失は除く) ②殺害を知っていたのに告知・告訴しなかった者(配偶者・直系血族は除く) ③詐欺・強迫で遺言を妨害した者 ④詐欺・強迫で遺言を強制した者 ⑤遺言を偽造、変造、破棄、隠匿者 ※効力発生時期は当然に発生 、資格回復不可 ※欠格事由に該当しない例:①過失致死、②傷害致死 廃除対象者:被相続人の請求による家裁の審判で発生 ①被相続人に対して虐待、重大な侮辱を加えた者 ②被相続人に対する著しい非行行為があった場合 他相続との関係 否定されない ※父の相続権を失っても母の相続権は保有 ※遺留分はない ※効力発生時期は被相続人の請求による家裁の審判 ※廃除取消しの請求が可(家裁への申請又は遺言による取消しで回復可) |
代襲相続 | Q: 親よりも早く亡くなった子供は、親の財産を相続できないのですか A: 早世されたお子さんにお子様(孫)がいれば、そのお孫さんが代わって相続できます。 これは「代襲相続」と呼ばれるものです。代襲相続は、相続人であるお子様が被相続人と同時に死亡又は早世された場合に、その子供(孫)又は再代襲として更にその子供(曾孫)が相続することが出来ますが、被相続人の兄弟姉妹の場合はその子供までが認められます。 なお、代襲相続は、相続人が死亡している場合の他、欠格又は廃除に該当した者の子供は相続できます。但し、「相続放棄」の場合は、当初から相続人出なかったことになりますので、代襲も発生しません。 | 代襲の発生事由:相続人死亡、②欠格事由、③廃除 ※「同時死亡」の場合も、代襲相続の対象になる 被相続人の子⇒代襲者は孫(再代襲が可:被相続人の曽孫) 被相続人の兄弟姉妹⇒兄弟姉妹の子(再代襲は不可) ※相続放棄は代襲不可 |
特別縁故者 | Q: 特別縁故者とは誰ですか A: 以下の要件を満たした人が該当します。 相続人ではないが、被相続人と生計を同一にしていた者(内縁配偶者、事実上の養子・養親等)被相続人の介護や看護を行っていた人(業務として報酬を得ていた人は除く)被相続人と特別の関係に合った者(遺言書が無くても口約束していた、師弟関係等の密接な関係にあった人等) | ①相続人ではないが、被相続人と生計を同一にしていた者(内縁配偶者等) ②被相続人と特別の関係に合った者(療養看護に努めた者等) ⇒「相続人不存在の確定」から3か月以内に家裁に申し出が必要 ※相続人が1人でもいたら特別縁故者への相続分与は出来ない⇒贈与で対応を検討 |
相続人不在の場合 | Q: 相続人がいない場合の相続財産はどうなりますか A: 相続人不在の場合、最終的には国庫に帰属することになりますが、遺言書があれば指定した者に財産を分与することできます。 「相続人不在」とは、法定相続人が居ない、法定相続人がいても、全員が相続放棄をしている又は欠格・廃除で相続人がいない場合に発生します。 従って、相続人不在の状態になると考えられる方でどなたかに財産を分与したいとお考えの方は、予め遺言書で受取人を指定しておくことをお勧めします。 また、相続人不在確定後3か月以内に特別縁故者が財産分与について家裁に申し立てて、それが認められれた場合には特別縁故者も受け取ることは可能です。ただし、相続人が1人でもいたら特別縁故者への相続分与は出来ません(贈与は可) | 相続人不在の場合は相続財産を法人として家裁に選任された管理人が管理 管理人が、一定期間内に「相続人の捜索」「相続債権者、受遺者に対する請求権申出」等の手続きを行ったうえで「相続人不在が確定」した場合⇒「相続財産法人」は存在しなかったものと見做され「相続人不存在確定前に財産管理人がした行為」は有効 |
失踪者の扱い | Q: 失踪者の生存確認又は失踪取消しがあった場合、既に分割した相続財産の扱いはどうなりますか A: 失踪宣言を受けていた失踪者の生存が判明した場合、本来の失踪者の貰うべき相続財産の分配(再配分)についてどうなるか関心のある方もおられると思います。 この場合、生存しているのに「失踪者=死亡者」のままにして置く訳にはいかないと思いますので、「失踪宣言の取り消し」手続きを家裁に対して申し出ることになると思います。 取消し手続きが執られますと、法律的には「初めから失踪宣言が無かったもの」となりますので、当然のことながら失踪されていた方の「相続権」が発生します。 そこで問題になるのが、既に分配されていた相続財産の内、失踪を取り消された方が本来貰うべきであった相続分を他の相続人が返却しなければならないのか?ということでしょう。 答えは、他の相続人が本来より多く貰っていた財産は「不当利益」になりますので返却が必要になります。場合によっては煩わしい「遺産分割協議」を最初からやり直さねばならない事にもなりかねません。 しかし、他の相続人からすれば「失踪していたのに、今更相続の再分配なんて。もう使っちゃったよ!」なんて場合もあって困りますよね。 でも、ご安心ください。次のような救済措置があって遡求は限定されます。 返還義務の範囲は「現に利益を受ける限度」に制限されます。 「現に利益を受けている限度(現存利益)」とは、受け取ったお金がそのまま残っていたり、生活費等のように形を変えて使用した分については返還しなければなりませんが、遊興費の様な浪費支出は返還しなくて済みむということです。…だからと言って常日頃から相続財産を浪費されることはお勧めしませんが。 失踪宣言の取り消し前に、関係者「双方」が「善意」で行った行為については影響しません。 これは財産というよりは契約行為等に関係することが多いと思います。ここでいう「善意」とは法律用語で「全く知らなかった」という意味で使用されています。 つまり、失踪宣言を受けた者の権利に影響(利害関係が発生)する契約等を締結した場合、契約の双方の誰もが「失踪者が生きているなんて知らなかった」状態(善意)で契約を締結したのであれば、その契約は有効であるということです。失踪者は自分が不利になるからと言ってその契約の解除を請求できませんのでご安心ください。 最後に、少し話しが飛びますが、失踪者の配偶者が再婚していた場合、婚姻関係はどうなるのか興味はありませんか? この場合は、前婚(失踪者との婚姻関係)は復活せず、後婚(再婚)が有効と判断されます。 | 取消しの手続きが必要⇒初めから失踪宣言が無かったものとなる⇒取得した財産は「不当利益」として返却が必要 【救済措置】 返還義務の範囲は「現に利益を受ける限度」に制限失踪宣言の取り消し前に、関係者「双方」が「善意」で行った行為については影響しない 婚姻は、前婚は復活せず、後婚の効力が維持される |
財産調査(調査内容) | Q: 財産調査とはどのような調査ですか A: 被相続人にどの様な財産があるのかを確定する調査です。プラスの財産(積極財産)だけでなく負債等のマイナスの財産(消極財産)も調べて、確定した内容を財産目録にまとめます。 財産調査には行政機関や金融機関、保険会社等、財産に係る可能性がある全ての相手に確認して必要な手続きを執る必要があります。そのため煩雑で大変な申請手続になることがありますので、行政書士等の専門家に相談することをお勧めします。 | 相続税申告対象の財産を確認し財産目録を作成 (預貯金、有価証券、不動産、動産、保険金、現金、出資金、負債等) |
財産調査(必要性) | Q: 財産調査はなぜ必要ですか A: 財産調査で収集した情報は、相続放棄や限定承認の判断をするうえで重要になるばかりでなく、遺産分割協議における相続財産の分配や相続税申告、相続登記等を判断するうえで不可欠です。 | 全ての相続財産及びその価値を明らかにして、相続税申告を正しくする 負債も明らかにすることで、相続の方法を判断する資とする(限定承認、相続放棄等) |
相続の対象財産 | Q: 相続の対象となる財産等は何ですか A: 一身専属的な権利義務を除く、被相続人の財産に属した一切の権利義務が対象になります。また、事故に巻き込まれる等、生命侵害に基づく損害賠償請求権、慰謝料請求権も相続の対象になります。 なお、受取人が別途指名されている生命保険金は、指名されている者の固有財産になります。相続の対象にはならないので気を付けてください。 | 一身専属的な権利義務を除く、被相続人の財産に属した一切の権利義務 生命侵害に基づく損害賠償請求権、慰謝料請求権 ※受取人が別途指名されている生命保険金は、指名されている者の固有財産 |
口座凍結問題 | Q: 被相続人の口座が凍結されてしまうと、葬儀費用や生活等に必要なお金も引き出せないのですか A: 今までは遺産分割が終了するまで葬儀費用や生活費等であっても被相続人の口座から相続人が勝手に引き出すことはできませんでしたが、法改正で相続人が一部を引き出せるようになりました。これは相続財産が特定の相続人に勝手に引き出されてしまうことを防いで公平性を担保することが目的でしたが、各種の口座自動引き落とし等まで出来なくなり大きな不具合を抱えていました。そこで平成28年の最高裁判決により、以下の2つの制度が新しく導入されました。 家裁の承認が無くても各口座毎に150万を上限に預貯金額の1/3に対して法定相続分の範囲で相続人等が単独で払い出しができるようになりました。例えば、A口座の預貯金が600万円で相続人2人(相続分が夫々1/2)の場合、一人の相続人が払戻可能な金額は600×1/3×1/2=100万となります。また葬儀代の支払等、家裁が仮払いの必要があると判断した場合は、共同相続人の利益を害さない範囲で仮払いが認められるようになりました。 | 残高証明書の発行手続き、休眠口座等の確認を行い、全ての預貯金財産を明確化 口座の名義変更、解約及びサービス停止手続き 口座凍結され取引が出来なくなる⇒口座引き落としの未払い料金を支払うと相続放棄、限定承認が出来なくなるので注意 |
有価証券 | Q: 相続財産に有価証券があった場合はどのようにしたらよいでしょうか A: 有価証券とは、株式、投資信託、債権(国債、社債)、小切手等のことを指します。 証券保管振替機構を使って口座や金融機関等を特定し高の照会を行うほか、取引の過去5年から10年程度の履歴証明を請求して財産を特定する作業が必要になります。 特定された有価証券は遺産分割協議等の合意内容に従い口座名義の変更や解約、サービス停止手続きが執られることになります。 また、有価証券の払い戻しを受ける場合には、特定した有価証券を被相続人の口座から相続人の口座に移管する手続き及び移管された有価証券を現金化して払い戻す手続きを金融機関に対し執る必要があります。こうして初めて払い戻された財産を各相続人に分配する手続きができます。 | 有価証券取引金融機関を特定し、口座の名義変更、解約及びサービス停止手続き |
不動産 | Q: 相続で不動産を取得した場合に必要な手続きは何でしょうか A: 不動産(土地、建物)を相続した場合、先ずは相続人への名義変更手続き(登記)が必要になります。登記の手続き業務は司法書士の先生(移転登記)や土地家屋調査士の先生(表題登記)の業務範囲になりますが、行政書士等他の士業の先生でも必要な書類を揃えて司法書士の先生等に引き継ぎ、お客様のフォローをしていきます。 そして、相続した不動産を売却または賃貸等をお考えの場合は、不動産の専門家と連携して査定や売却又は賃貸に係る仲介を行い円滑に売却・賃貸契約が出来るように調整させていただきます。 当事務所では宅建士・賃貸不動産経営管理士として、もう一歩踏み込んだ御提案やご相談を受けることが出来るかもしれませんので、是非お気軽にご相談ください。 更に利用の予定もなく、山林や原野等といった売却も難しい場合には「相続土地国庫帰属制度」により国に所有権を移転できる制度の活用もあります。この制度を利用することで固定資産税や土地の維持管理費用等の負担を軽減することが出来ます。 | 所有する不動産のかかる情報を収集し、不動産を特定、不動産上の権利関係の有無を確認、不動産の評価を行う 相続不動産国庫帰属承認申請手続きの活用 |
動産 | Q: 自動車を相続した場合はどうしたらよいでしょうか A: 自動車を相続した場合には、新しい所有者への名義変更、または売却、廃車手続きを行う必要があります。この手続きは法律で行政書士の業務範囲になります。 相続した自動車を引き続き使用したい場合には移転登録申請の他、車庫証明やナンバープレートの変更手続き、車検手続き(継続使用)等が必要になります。 現在、行政書士が出張してナンバープレートを交換することが出来る様になりましたので、ご希望の方は一度ご相談ください。 もし使用する予定もなく売却を考えている場合は、自動車販売の専門業者等に依頼することになりますが、行政書士が必要な書類の作成を行なわせていただきます。 相続した自動車の車検が切れていたり廃車する場合には、抹消登録申請の手続きを執ります。 | 自動車等の相続等手続き(名義変更、売却、廃車手続き等) |
生命保険 | Q: 生命保険金の請求手続き A: 生命保険金の受取手続きは、一般的には受取人本人が手続きを実施します。受取人が指定されている場合は、その保険金は受取人の個人財産となり相続財産には含まれません。保険の契約者と受取人が被相続人本人であった場合の保険金は相続財産になるので相続税の課税対象になります。 被相続人にかけた保険で、契約者と受取人が同一の場合の保険金は所得税、契約者と保険金受取人が別人の場合は贈与税の課税対象になるので注意してください。 保険金の請求手続きに付いて行政書士事務所では、受取人が多忙で手続きする時間が無い様な場合、受取人本人に代わって手続きを行うことが可能です。必要な方はお気軽にご相談ください。 | |
負債の確認 | Q: 負債の確認はどうしたらできますか A: まず、負債の有無、借入先、借入総額、借入残高等を調べる必要があります。 負債の有無は、銀行口座からの引き落とし事実、ローンの支払い請求書や契約書、領収書等からある程度は特定できます。併せて信用情報機関に紹介することでも被相続人に借入金があるか否かを確認することも可能です。 | 金融機関等の借入金の有無を確認し、要すれば清算 相続方法の選択に影響 |
経費調査 | Q: 経費調査はなぜ必要ですか A: ここでいう経費とは公共料金、医療費、葬式費用(葬儀代、飲食接待費、お布施)等、被相続人の死後に支払った費用のことを言います。 これらの費用は「必要経費」として相続財産(相続税の課税対象)から控除できるため、その後の相続税対策に使用できます。領収書はしっかり保管しておいてください。 万が一、領収書が無い場合や紛失している場合は費用について書かれたメモ等でも結構です。 | 相続課税対象から除外できる経費等を確認(葬儀費等) |
相続方法の種類(消極財産が多い場合) | Q: 相続の種類と負債(消極財産)が多い相続の場合、どうしたらよいのでしょうか A: 相続財産を相続する方法には「単純承認」と「限定承認」及び「相続放棄」の3種類があります。状況によって「限定承認」又は「相続放棄」を検討する必要がある場合もあります。 相続方法で最も一般的なのが「単純承認」で、これは被相続人の資産だけでなく負債も全てそのまま受け継ぐ方法です。この場合は特別な手続きも必要なく、何もしなければ「単純承認」したことになります。しかし、資産よりも負債の方が多い場合、つまり借金だけを背負うことになるような相続の場合、相続人の立場からすればそんなものまで相続したくないと感じられると思います。特に負債が大きい場合には残された相続人の生活にも大きな影響を及ぼします。そんな時に選択できるのが「限定承認」という相続方法です。「限定承認」は相続人の全員が限定承認することに同意した場合のみ可能で、加えて家裁に申述して認めてもらう必要があります。この方法によれば、返済しなければならない負債(借金等)額は相続資産(プラスの財産)の額が上限になり、資産額を超える負債額の返済が免除されることになります。半面、手続き等に時間がかかる上に、債権者にとっては貸したお金の回収が出来なくなるため裁判等に発展する可能性もあります。なお、相続開始から3か月以内に家裁への申述が必要で、相続人の誰か一人でも財産を勝手に処分したら「限定承認」は認められなくなるので注意が必要です。 このようにデメリットも多いため、実際には限定承認はあまり利用されていません。 最後は「相続放棄」という方法です。相続が開始された後に家裁に申述して認めてもらう必要がありますが、これは個人単独で申述が可能です。 「相続放棄」すると最初から相続人ではなかった扱いになりますので、債権(資産等)・債務(借金・負債等)を問わず資産の全てを相続できなくなります。また、特に負債が多い場合には、相続を放棄した本人自体はその負債の返済義務からは解放されますが、他方で他の残された相続人(親、兄弟、祖父母等)に返済のシワ寄せが行くことになりますので、慎重な検討が必要になります。なお、限定承認同様に相続開始から3か月以内に家裁への申述が必要です。 | ①単純承認:被相続人の権利・義務を無限の承継する(相続を知った時から3か月の熟慮期間有)※限定・放棄しなければ単純承認とみなす(特段の手続き不要) ②限定承認:相続財産の限度で債務弁済する(家裁で手続き、共同相続人全員の同意が必要) ※限定承認後の任意での弁済は有効 ③相続放棄:相続の効果を全面的に否定する(家裁で手続き※最初から相続人として存在していなかったものとして扱う) ※限定承認・相続放棄する場合は、相続開始を知った時から3か月以内に家裁への申述が必要 ※限定承認・相続放棄する場合であっても、相続人の1人が相続財産の全部または一部を処分した場合には「単純承認」となる 【承認・放棄の通則】 単純承認 限定承認 相続放棄 方式 ①単純承認の意思表示 or ②法定単純承認事由の発生(単純承認の擬制) 「財産目録の作成・提出」 + 「限定承認の申述 」 ※共同相続人全員の同意が必要 家裁への申述(相続開始後) ※相続開始前の放棄は不可 ※相続開始を知った時から3か月以内に家裁へ申述 ※相続人が財産を処分した場合は単純承認 効果 遺産と相続人固有財産が一体化 遺産と相続人固有財産はそれぞれ独自性を維持 放棄者は最初から相続人ではなかったとみなす |
相続方法の種類(比較) | Q: 相続方法のメリット、デメリットを教えてください A: 以下のとおりです。 単純承認 (1)メリット 基本的な相続の方法です。 (2)デメリット プラスの資産(積極財産)だけでなく、マイナスの資産(消極財産)も全て包括承継してしまいます。 限定承認メリット負債の上限が資産総額の上限に確定し、返済義務が緩和されます。被相続人の債務額が不明な場合に予期せぬ負債まで背負うリスクが回避可能になりますので安心できます。負債が多いが、どうしても相続したい財産(不動産、事業用資産等)がある場合でも引継が可能になるので、債務が無い状態で家業承継が可になります。次順位の相続人に影響しないデメリット手続きが複雑で時間と労力を要します(1年かかることもある)。申請期限の3か月以内迄に間に合わない場合には熟慮期間の延長申請手続き返済を巡る債権者とのトラブルに発展する可能性が考えられます。訴訟等のトラブルになった場合は弁護士等の専門家の支援が必要で費用も高額化する恐れがあります。購入時より売却時の方が高かった場合には譲渡所得の課税対象になりますので、準確定申告が必要です。受け継いだ財産は相続控除の対象外になります。例えば土地を相続した場合、「小規模宅地等の特例」の対象外になり、固定資産税の最大80%控除もなくなります。もし負債が少なかった場合は、逆に相続税が高くなる恐れもあるので注意が必要です。もしかしたら、今後のクレジット等の信用調査や資金調達等に何等かの悪影響が出る可能性も否定できません。相続放棄メリット 被相続人の負債を背負うことが無くなります。 デメリット 不動産や預貯金等のプラスの資産も一切相続できなくなってしまいます。 | |
遺産分割協議書(内容) | Q: 遺産分割協議書とはどのような物ですか A: 遺言等により予め相続財産の分配について何ら指定が無いと、誰に何をどれだけ取得させるか決めなければなりません。その場合、全ての共同相続人の間で協議し合意に至る必要があります。遺産分割協議書はその合意内容を文書化したものです。相続権利者が一人でも協議に参加していなければ、その分割協議の内容は無効になるので注意が必要です。この場合、全員が一堂に会して協議する必要はなく、時間や手間はかかりますが、分割協議書を持ち回りして合意を得る方法も可能です。 また、全ての共同相続人が合意した大変重い内容になりますので、法定相続分に優先するだけでなく、遺言書の内容と異なった相続財産の分割も可能になります。 作成した遺産分割協議書は、各相続人が保管します。 | 被相続人が遺言で分割について指定が無い場合に全ての共同相続人の間で協議⇒誰に何をどれだけ取得させるかを明確にする ※貸金債権、代金債権、損害賠償請求権等は分割の対象外 |
遺産分割協議書(必要性) | Q: 遺産分割協議書が無いと困ることはありますか A: 相続手続きを円滑に実施する等、様々な場面で必要になるだけでなく、将来にわたって分割を巡る親族間での紛争の防止に役立ちます。 遺産分割協議書は分割協議で合意した内容を証明するものです。したがって、金融機関の相続手続き、相続登記の申請、相続税の申告等の様々な手続きにおいて事実を証明する基礎として必要になります。さらに、将来にわたって遺産分割の内容を巡る不要な紛争の発生を予防すると共に、もし紛争が起きた場合でも、相続人全員がその内容に合意したことの証明になるので、たとえ分割内容に不満がある相続人がいたとしても対抗が可能になる等、様々な場面で必要になります。 また、相続人が1人(1人が全てを相続する)の場合でも遺産分割協議書は必要になります。 もし、相続人が複数だったり遠隔地に住んでいた場合、相続財産が複雑だったり多くある場合等、遺産分割業務が煩雑になると予想されるような場合には、行政書士等の専門家に相談されることをお勧めします。 | |
遺産分割協議書(調停) | Q: 遺産分割協議が整わなかった場合、遺産分割は出来なくなりますか A: 遺産分割協議で合意に至らなかった場合、家裁の調停もしくは審判を受けて遺産分割を実施することになります。その場合、「紛争」事態に該当してしまうので弁護士の先生でなければ対応できなくなります。当然、裁判費用等も発生してしまうことになるでしょう。 また故人にとっても自分が残した相続財産が理由で親族同士の揉めるのは決して望んではいないと思います。 出来れば、平和裡に合意に達するように協議出来たら良いですね。 | 共同相続人全員の合意が必要⇒法定相続や遺言に優先 ※金銭債権の内、貸金債権、代金債権、損害賠償請求権は遺産分割の対象外 ※共同相続人の一人の債務不履行を理由に解除は不可⇒共同相続人全員の合意で新たに遺産分割協議は可 ※法定相続分以上の相続分は登記が必要 |
遺産の分配方法 | Q: 相続財産の分配の仕方は自由にできないのですか A: 自由に決めることが出来ます。 法律では「法定相続分」が規定されています。特にそれで問題が無ければ「法定相続分」のとおり財産を分割すればよろしいのですが、現実はそんなに単純ではない場合が多いと思います。 また、遺言書で分割方法等の指定があれば被相続人の意思を最優先に指定のとおり分割することになります。 では、遺書が無かった場合にはどうするのでしょう。その場合は、全ての相続人で遺産分割協議をして夫々の相続人の相続分を決めることが出来ます。この協議での合意内容を文書化したのが「遺産分割協議書」ですが、その内容は柔軟で、遺言の指定と異なる分割も可能です。 しかし、遺産分割は各相続人の利害に直接かかわるため、全員が合意に至らない場合もあります。その場合は家裁等の調停や審判に委ねることになります。故人が相続人のことを思って蓄えてくれた資産なのに、それがきっかけで関係が悪化して調停や審判に頼るようなことになるのは、悲しいことだと思います。 遺産分割協議で分割の割合を決める場合は、平和的に合意に至るのが望ましいですし、故人もそれを願っていると思います。 | ①遺言による指定 ※共同相続人全員の協議で遺言と異なる指定も可 被相続人は相続人以外の第三者に指定を委託できる 遺産分割協議(遺言による指定が無い場合) ②家裁の調停・審判(遺産分割協議が整わない場合) |
共有財産と非共有財産の取り扱い | Q: 個人がアパートを経営していて賃貸収入が入ってきます。遺産分割が決まるまで、家賃収入は誰のものですか A: これは共同相続人の共有相続財産と見做されるか否かの問題になります。 例えば、現金や預貯金の様な「共有相続財産」になると相続分割の対象になり、分割されるまでは処分できなくなります。他方、不動産賃料や遺産分割前に共同相続人全員の合意に基づき売却した不動産代金等は「非共有財産」と見做され、分割されるまでの収入は相続分に応じて分配されます。 | 【前提】共同相続人は各自の相続分に応じて相続する 【処分】共同相続人は自己の相続分に相当する持分の範囲で処分する ※可分債務は遺産分割の対象とはならず、相続の割合に応じた分割債務となる ①遺産分割前の管理 a.全部の処分は、相続人全員の同意が必要 b.管理は相続分の価額の過半数の同意が必要 ②保存行為は共同相続人単独で可 共有相続財産となる判例 ⇒相続分に応じて分割 ①現金(金銭債権) ②預貯金 ※2019年改正(遺産分割前の払戻し制度) (各金融機関毎に150万円を上限に預貯金額の1/3に相続分を乗じた一定額は単独で処分が可となった) 共有相続財産とならない判例 ①不動産から生じる賃料 ⇒相続分に応じて分割 ②共同相続人全員の合意で遺産分割前に第三者に売却した不動産の代金 |
遺贈と死因贈与 | Q: 遺贈と死因贈与の違いは何ですか A: どちらも死亡に伴ってその効力が発揮される贈与ですが、「遺贈」は遺言書に基づく一方的な贈与であるのに対して「死因贈与」は双方の同意を必要とする契約行為ですので、撤回は書面が必要になります。また、遺言に関する規定は死因贈与には当てはまらないので、「15歳の遺言能力に係る規定」は死因贈与では未成年が単独で締結した贈与契約にあたり取消しが可能です。 | 遺贈は単独行為、死因贈与は契約行為 ※遺贈義務者等の利害関係者は相当期間を定め承認又は放棄を催告⇒確答無しは承認とみなす ※包括受遺者は相続人と同等の義務を負う⇔特定受遺者は特定財産の権利のみ取得 【判例:特定遺贈と不動産登記の争い】 生前遺贈(受遺者)と特定遺贈(受遺者)間の登記をめぐる争いは対抗関係にある |
特別受益者と寄与分 | Q: 特別受益者や寄与分とは何のことですか A: 特別受益者とは、生前に被相続人から相当の財産贈与又は生前贈与もしくは遺言等で特別に何らかの財産を貰うことになっている者を指します。寄与分とは、共同相続人及び相続人以外の者(例:相続人の配偶者等)で長年にわたり被相続人の事業を共に行ったり療養看護に努める等、被相続人の財産形成に寄与したとして共同相続人の協議又は家裁の調停等で認められた者を指します。 | 実質的な公平性を図ることが目的 特別受益の有無を確認 生前に被相続人から相当の財産贈与又は生前贈与もしくは遺言等で特別に何らかの財産を貰うことになっている者等の有無 寄与分の有無を確認 共同相続人及び相続人以外の者(例:相続人の配偶者等)で長年にわたり被相続人の事業を共に行ったり療養看護に努める等、被相続人の財産形成に寄与したとして共同相続人の協議又は家裁の調停等で認められた者の有無 |
相続の取戻し権 | Q: 遺産の分割前に相続人の1人が勝手に相続財産である現金を引き出してしまったため、分割できる財産が減ってしまいました。取り戻せるのでしょうか(相続分の譲渡と取戻し権) A: 従前、分割財産は「遺産分割の際に実際に存在する財産」が対象とされていた事、そして分割前でも共同相続人が共有持ち分を処分することが禁止られていなかったため、遺産の分割前に相続財産である現金の一部が勝手に処分された場合であっても行為そのものは適法とされています。そのため勝手に引き出した相続人だけが得をする状態になっていました。 そこで、この不公平性を解決するための法改正が行われ、共同相続人全員(現金を勝手に引き出した相続人の同意は不要)の同意を得て、現金が引き出されなかったものとして本来受け取るべき相続額が計算されてその額を受け取れることが出来るようになりました。そして、その分配額に応じて、勝手に引き出した相続人の受取額が調整されることになり、その結果、勝手に引き出した者は「特別受益者」とされて、その受け取った過剰分は他の相続人に返却・分配されるようになりました。 | 【譲渡】:共同相続人は各自の相続分について譲渡が可 【取戻し】:他の共同相続人は譲受人又は転得者に対して一方的に価額と費用を償還して取戻しが可(譲渡通知後1か月以内に行使) |
遺産の登記 | Q: 遺産分割で相続した分が法定相続分よりも多くなりました。そのまま受け取っても大丈夫ですか A: 一般的には問題ありませんが、いくつか注意を要することがあります。 先ず、不動産等、登記が必要な財産を相続した場合です。この場合は「対抗要件」という、第三者に「これは自分の物だ!」と正当な主張ができるか否かという正当性の問題が生じる可能性があります。例えば、相続人が2人いて、土地を相続する場合です。法定相続分によれば、本来、土地の相続分は1/2ずつで、この1/2の所有権については登記を済ませていなくても自分が相続した土地として所有権を主張できるので、仮に第三者が所有権を主張しても負けません。しかし、その内の一人が土地を全て相続した場合は、その人は本来相続するはずだった持分よりも多く貰った1/2について第三者より先に登記をしておかないと自分の土地だと主張できなくなります。登記は早い者勝ちです。 つまり、法定相続分を超える部分については登記しておかないと第三者に取られてしまう恐れがあります。 次に気を付けなければならないのは「遺留分」というものです。「遺留分」とは、相続人(兄弟姉妹を除く)が最低限受け取れる財産のことです。例えば、複数の相続人が居るのに遺言で一人だけに全ての財産を相続させ、他の相続人には極めて僅か又は一切財産を分配しないと指定した場合に問題になります。このような場合になっても他の相続人には、遺産の一定の割合について請求する権利(「遺留分侵害額請求権」)が与えられています。法改正により、他の相続人には金銭で遺留分に満たない額(遺留分侵害額)を支払うことになりますので、もろ手を上げて喜べない状況になる場合もあるかも知れません。 | |
配偶者居住権 | Q: 自宅が相続で分配されてしまうと配偶者は自宅に住めなくなるのですか(配偶者の保護:2019年新設) A: 配偶者の居住権は保護されるので心配ありません。 従来は、今までご夫婦で安心して暮らしていたマイホームも相続財産に組み込まれるため、マイホームが配偶者以外の者に相続されて配偶者の住む場所が無くなってしまうことがありました。また住む場所を確保するために自宅を相続すると他の相続資産の受取分が減る又は受け取れなくなるなどして、相続後の生活費の確保が困難になる恐れもありました。 その様な不具合を解消して配偶者が安心して今まで通りマイホームに住み続けられるように法改正がなされています。これによって一定の要件を満たせば居住を継続しつつ、他の相続財産も取得できて金銭的不安も軽減できるようになりました(配偶者居住権、配偶者短期居住権)。 ご関心がある方は、行政書士等の専門家に相談されると良いでしょう。 | |
業務委託費用 | Q: 相続手続きをお願いした場合に必要な費用はいくら位ですか A: 遺言書の有無、相続人の人数や相続財産といった基本調査や、遺産分割協議等、手続き上の業務量や依頼項目の数、難易度等で経費は大きく変わってくるので、一律に「いくら」と言い切ることはできません。 とは言え、おおよその目安として行政書士協会が業務ごとに平均報酬額等を公表しているので参考になると思います。ただし、この金額は純粋な報酬額であって、実費(手続きにおいて当然に依頼者が負担すべき必要な証明書等の取り寄せ費用や交通費、その他必要な諸経費等)は含まれていないので注意してください。 | |
相続した農地の転用 | Q: 農地を相続したのですが、農業は行わないのでその土地に家を建てたり売却したりできますか A: 農地には多くの規制がかけられているので、簡単に農地以外に転用することはできません。 例えば、農地を他人が農業を行うために売却する場合(農地法3条)、農地に自宅を建てる等、農業以外の目的で自分が使用する場合(農地法4条)、農地を農業以外の目的に使用する他人に売却する場合(農地法5条)は、都道府県知事の許可や農業委員会への届出等の許認可手続きが必要になります。 場合によっては、売却の他に農地を公的機関等に賃貸する方法もあります。 この様な許認可申請業務になる場合には行政書士にご相談ください(他の士業は許認可申請業務が出来ません)。 また、農業を行うことを条件に固定資産税等の優遇措置を受けている場合は、それに係る手続きや税金の納付等も必要です。税金に関する申請手続き事項等は税理士のお仕事になります。 | 都市計画法:市街化区域内で1000㎡以上の土地に営農者の 住宅建設するには開発許可が必要 ※単に相続の場合、農地法3条の許可を受けた場合は不要 |
相続した土地の活用 | Q: 農地以外の土地を相続したのですが、何か良い活用方法はありませんか A: 相続した土地の有効活用については関心をお持ちの方も多いと思います。 土地の所在場所や地積等の条件によっては建物が建てられなかったり、建てられても何らかの規制を受けたり等、様々な法律の規制がかけられている場合がありますので、制限の中でどのような活用方法があるのか検討することが必要になります。 具体的な活用方法として、土地売却の他にも借地や駐車場として活用、もし資金に余裕があればアパート等を建てて賃貸収入を期待する等の方法もあるでしょう。その場合も、不動産会社等と協力する自己建設方式や事業受託方式、土地信託方式、等価交換方式、建設協力金方式等の方法もありますので、先ずは行政書士等の専門家に相談して、より良い活用方法を見出すのが良いと思います。 | 国土利用計画法:・監視区域(小笠原)は事前届 ・注視区域(国の主要機関、防衛施設等の 周辺等)で一団の土地(市街化区域内: 2000㎡以上、市街化区域以外の都市計 画区域:5000㎡以上、都市計画区域外: 10000㎡(1ha)以上)は事前届 ・特別注視区域(国の主要機関、防衛施設 等の周辺等)で200㎡以上は事前届 宅地造成等規制法 都市緑地法急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 地滑り等防止法 大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 都市再開発法 森林法 生産緑地法 その他の法律 土地の有効活用方法(自己建設、事業受託、土地信託、等価交換、定期借地権、建設協力金) 譲渡所得(宅地譲渡所得)の特別控除800、1500、2000万 小規模宅地の評価減の特例 |
相続した建物の活用 | Q:実家(建物)を相続したが、住む予定が無いので建物は壊すしかないでしょうか A:そのままでは、固定資産税が課税され、更に空き家のまま放置しておくと固定資産税も6倍になる可能性もありますので、売却の他にも何らかの方法で資産活用できないか検討してみては如何でしょうか。 例えばご実家の建物の状態によっては取り壊さずに活用する方法もあります。 例えば、築年数が浅い場合や手入れが行き届いて綺麗なお宅であれば、取り壊すよりも賃貸住宅として家賃収入を得る方法もあるでしょう。 もし、取り壊す場合や土地と一緒に売却する場合は、固定資産税や所得税の優遇措置も使える場合がありますので、様々な可能性を踏まえて検討されると良いと思います。 当事務所では行政書士の資格の他に「宅建士」「賃貸不動産経営管理士」「ファイナンシャルプランナー/AFP」として総合的な知見をもってお役に立てることが出来るかもしれませんので、一度お気軽にご相談ください。 | 賃貸住宅管理(賃貸借)、不動産所得に係る所得税 サブリース契約(転貸借) 、不動産所得に係る所得税 譲渡所得(空き家・居住用財産の譲渡所得)の特別控除3000万 |
遺言関係
区分 | 質問 | 回答 |
遺言の目的と7つの誤解 | Q:遺言7つの誤解 A:遺言書の目的は「遺言書を残すこと」ではなく、「自分の死後、遺言の内容を速やかに実現してもらう」ことです。遺言の主役は貴方本人です。ご自分の希望を正直に遺言書に託しましょう。 そこで、遺言書を巡るいくつかの誤解について御説明します。 「我が家は家族円満だから遺言書なんて必要ない」という誤解 確かに今、円満にご家族が過ごされているのは、もしかしたら貴方が上手に家族をリードして束ねているからかもしれません。もしそうであれば、そんな貴方が亡くなられた後、誰かが貴方に代わって家族を纏めてもらえるように遺言を残すことも大切ではないでしょうか。 「我が家には遺言書を残すほどの財産は無い」という誤解 「財産の額」に対する感覚は人夫々違うもので、貴方が「大した額ではない」と思っていても、他人が同じように思っているとは限りません。 実は、2020年における1000万円以下の少額財産で揉めて家庭裁判所の調停に委ねられた相続事件は実に2017件にも及びます。少額でももめる可能性は十分にあるのです。 「遺言なんて縁起が悪い」という誤解 昨今は逆に縁起が良いと言って「生前葬」も行われるようになり、価値観が多様化してきてはいますが、「遺言」は「死を前提」としている性格上、やはり「縁起が悪いもの」と捉える方の方が多いのは否めないと思います。 それは「自分の死後」に対する漠然とした不安から「死」という事実を避けたい気持ちが関係していると思います。「残された家族はちゃんと生活していけるだろうか?」、「財産で揉めて家族がバラバラになってしまわないだろうか?」等々。 遺言書を残すという行為は、これら漠然とした不安の解決策の一つにもなるのではないでしょうか。 「遺言を残すには、まだ早い」という誤解 遺言を有効とする要件の一つに「遺言能力」が問われます。年齢的には15歳以上であること、能力的にはしっかりとした判断能力があることです。歳老いて認知症等になってから作成したのでは「遺言能力」に疑問視され、折角の意思表示が実現できなくなる恐れがあります。その様に考えると、寧ろ元気でしっかり判断能力がある時に遺言書を作成することが望ましいと考えます。事実、遺言書の内容に不満を抱いた相続人によって「遺言能力」を巡る争いが起きています。 「遺言を残したら財産が使えなくなる」という誤解 確かにイメージとして「遺言書に書き込んだ財産は確定したものであるから、遺書に記載した以降はこれを処分することができない」という考えをお持ちの方が多いかもしれません。また、一度遺言として決めたことを自分の都合で変更してしまうことへの「抵抗感」や「罪悪感」「うしろめたさ」があるかも知れません。特に金銭や相続財産であれば尚更かもしれませんが、余り気にする必要はないと思います。 先ず、基本的に遺書の内容は貴方しか知り得ません。つまり、財産がどれだけ変化しても誰も知り得ないのですから記載した金額に過度に囚われる必要はありません。心置きなく必要な時は自由に財産を処分しても構わないのです(誰も気づきません。 笑)。さらに遺言の内容に抵触する部分は撤回されたものと見做されますので、財産に変化があった場合でも同様の扱いになります。遺言書の記載する際、財産等を確定せずに口座名や土地の住所に留めたり、分配割合で示すような工夫もあるでしょう。…とはいえ、やはり遺言内容に影響が出る場合は、相続での不要な混乱や争いを避けるためにも行政書士等に連絡して遺言書を作成し直すことをお勧めします。 「遺言を残したら家族に見捨てられてしまうのではないか」という誤解(心配?) このような心配は、子供から遺言の作成を頼まれた場合に多いようです。しかし、遺書を作成する主人公は子供ではなく貴方です。先ずは貴方の本当の気持ちを明確に遺書として残すべきです。…とはいえ、やはりこれは「建前論」になってしまいますね。 子供から頼まれた場合、遺書の内容について子供も関与して承知している場合も多いことでしょう。それゆえに心細くなるのかもしれません。 実はそんな心配を解消する方法があります。 所謂「負担付遺言」とすれば良いのです。 つまり、子供に対して「自分(達)に冷たくしたら、遺言は撤回する」とした旨を遺言に盛り込み、子供にもそのことを伝えておけば良いのです。 遺言が実現されるか不安 遺言は貴方が亡くなってから実行されるものなので、貴方自身が確認することは出来ません。特に配偶者が認知症や御病気であった場合やお子様に障害等があった場合に、「特定の者に生活のサポートを遺言でお願いしたいのだが本当に実現してくれるだろうか?」と不安になられることはよく理解できます。 この場合も、「負担付遺言」にすることで実現を担保しやすくなるでしょう。 | 遺言能力 【原則】:15歳以上なら単独で遺言が可(未成年、被保佐人、被補助人でも可) ※成年被後見人は事理弁識能力が回復した時であって医師2人以上の立会いが必要 【制限】自筆以外は(未成年者、利害関係人以外)の証人又は立会人の立ち合いが必要 ※未成年者は証人・立会人になれない |
遺言書が必要な場合 | Q:どんな場合に遺言書があった方が良いですか A:相続をめぐって紛争が発生する心配がある等、次のような方には遺言書の作成をお勧めします。 子供のいない夫婦で配偶者に財産を渡したい場合(特に配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合は誰に何を相続するか明確にしないと紛争になりやすいです。)内縁の配偶者や相続人の配偶者、生前にお世話になった人等、本来相続人でない者に財産を渡したい場合相続人の生活状況等を配慮したい等、法定相続分と異なる配分をしたい場合相続人の人数・遺産の種類・数量が多い場合や、財産の種類に著しい偏りがあって分割が難しい場合農家や個人事業主の場合で特定の相続人に事業を承継させるために事業用資産の分散防止が必要な場合その他再婚していて先の配偶者と今の配偶者の夫々の間に子供が居る場合配偶者以外との間に子供が居る場合相続人の中に特別代理人の選任が必要になる未成年の子がいる場合相続人の中に行方不明者や浪費者がいる場合相続人同士の仲が悪い場合 | 子供のいない夫婦で配偶者に財産を渡したい場合(特に配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合は誰に何を相続するか明確にしないと紛争になりやすい)内縁の配偶者や相続人の配偶者、生前にお世話になった人等、本来相続人でない者に財産を渡したい場合相続人の生活状況等を配慮したい等、法定相続分と異なる配分をしたい場合相続人の人数・遺産の種類・数量が多い場合や、財産の種類に著しい偏りがあって分割が難しい場合農家や個人事業主の場合で特定の相続人に事業を承継させるために事業用資産の分散防止が必要な場合その他再婚していて先の配偶者と今の配偶者の夫々の間に子供が居る場合配偶者以外との間に子供が居る場合相続人の中に特別代理人の選任が必要になる未成年の子がいる場合相続人の中に行方不明者や浪費者がいる場合相続人同士の仲が悪い場合 |
遺言書が不要な場合 | Q:遺言書が不要な場合はどんな時ですか A:以下のように相続財産を巡る争いが発生する恐れの小さい場合は、あえて遺言書を作成する必要性は低いと思われます。 相続関係が単純(例えば、相続人が配偶者と子供1人だけ等)な場合財産が少額かつ預貯金のみで、法定相続分に従って分配が容易である等、紛争に繋がる恐れが小さい場合 しかし、遺言書があれば相続をめぐる不測の紛争の回避に役立つだけでなく、相続手続きが迅速に行えます。また遺言執行者を予め指定しておけば相続手続きを全て執行してくれるので相続人に係る負担軽減に役立つ等、メリットも大きいですから、このように心配が無い場合でも遺言書の作成をお勧めします。 | |
遺言書作成のメリット | Q:遺言書を作成することは税金対策にも繋がりますか A:はい、一般論として相続額が相続税の基礎控除額を超えるような場合には有効な税金対策の一つとして検討する価値はあると思います。 相続財産の総額が基礎控除額を超えると、超えた額に対して相続税がかかります。 例えば、相続税の基礎控除は3000万円+(600万円×法定相続人の人数)ですが、配偶者の場合は最大1億6000万円まで非課税(配偶者の税額の軽減措置)となる優遇措置があります。この制度を利用して遺言で配偶者の配分を多くすることで一次相続での減税対策が可能です。但し、配偶者が無くなった際(二次相続)は、残った財産の額によって相続税が増える可能性もありますので注意が必要です。 また、生命保険の非課税限度枠(500万円×法定相続人の数)や、土地がある場合は固定資産税の軽減に繋がる小規模宅地等の特例の活用等、遺言と組み合わせることが有効だと思います。 この点について、とりあえず一般的な概要だけでも知りたいという場合はFP資格者に、具体的な計算については税理士の先生に相談されると良いでしょう。 | |
遺言で出来ること | Q:遺言で出来ることは何ですか A:「遺言自由の原則」に基づき、生前自由に処分することが出来た自分の財産をどのように処分しようと原則自由です。したがって、「遺言をするか・しないか」、「遺言内容を変更または撤回するか・しないか」も自由です。しかし、遺言で全てのことが出来るわけではありません。公序良俗に反する内容は認められませんので注意してください。 | 狭義の相続関連事項推定相続人の廃除・取消し相続分の指定、指定の委託特別受益の持ち戻しの免除遺産分割の方法指定、指定の委託遺産分割の禁止共同相続人の担保責任の免除・加重遺贈の滅殺の順位・割合の指定遺産の処分関連事項遺贈財団法人設立のための寄付行為新宅の設定身分上の事項認知未成年者の後見人の指定後見監督人の指定遺言執行に関する事項遺言執行者の指定、指定の委託その他祖先の祭祀主催者の指定生命保険金受取人の指定、変更 |
遺言の種類 | Q:遺言の種類と特徴 A:普通遺言書としては、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、いずれの場合であっても夫婦二人の遺言を一通の遺言書にまとめて作成するような「共同遺言」は出来ません。 「自筆証書遺言」はその名前の通り、全て遺言者自身が自筆する必要があり、期日が特定でき、氏名に押印が必要等、書式に関して極めて厳格な規定に則り作成する必要があります。証人が不要なので遺言内容について秘密を確保できるというメリットがあります。半面、定められた書式に抵触した場合や書き間違え、遺言内容が曖昧であったりした場合には遺言書として無効になるリスクをはらんでいる他、偽造、変造、隠匿のリスクが常に存在します。また、遺書の保管は基本的に個人管理となりますので、遺書を誰にも見つけて貰えなかったり、紛失等の恐れがあります。更に遺言書を発見した際には、開封に際して家裁の検認手続きが必要になります。 「公正証書遺言書」は証人2人以上の立ち合いの下で遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、それを公証人が文書に起こします。そして公証人が作成した文書を遺言者及び証人に読み聞かせ、内容に間違いが無いことを確認したうえで各自署名・押印して作成する遺言書です。 偽造、変造等の恐れはなく公証人が関与することから遺言書としての信頼性も高く検認も不要で、自筆公正証書のように書式の問題で無効になる心配はありません。のた、公正証書遺言の場合は保管制度も整備されているので紛失の恐れはありません。他方で、作成に際して証人や公証人が関与しますので遺言の内容を知られてしまいます。 「秘密公正証書」は誰の立ち合いも必要とせずに作成できます。遺言者自らが作成して署名、押印した遺言証書を封印し、公証人及び2人以上の証人の前に提出します。遺言者が自分の遺書であることを申述した後、公証人が封書に日付と申述を記載し、遺言者、証人、公証人が各自署名・押印したものです。つまり、封緘が公証行為として行われた遺言書のことです。 秘密公正証書の場合も自筆証書と同様に書き間違えや遺言内容が曖昧であったりした場合には遺言書として無効になるリスクをはらんでいることに加えて、保管も個人管理になりますので紛失の恐れもあります。なお、実務上、使用例は稀有の様です。 | 秘密証書遺言 自筆証書遺:信用性は高いが閲覧請求が可なため秘密の保持は望めない ※氏名、全文、日付(※日付が特定できれば可)を自筆(※カーボンコピーは可)し押印(家裁の検認が必要) ※H30改正で相続財産目録の自筆要件が緩和され、パソコン文書(但し各葉毎に署名・捺印必要)、通帳コピー、登記証明書等も可 公正証書遺言 ※いつでも方式に関わらず撤回可 ※共同遺言は禁止 |
お勧めの遺言 | Q:遺言書を作成する場合、どの遺言書にするのが良いですか A:公正証書遺言をお勧めします。 「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」それぞれにメリット・デメリットがありますので、遺言者のニーズに最も合った方法を選択することが原則です。 とは言え、遺言書は相続人に「遺言書がある」ことを気付いてもらって初めて遺言の内容の実現が可能になるものです。存在に気づいてもらえなければどんなに素晴らしい遺言であっても意味を為さないばかりか、後で存在が分かった場合には揉め事の原因にすら成りかねません。 その様な観点からすると、個人的には保管制度がしっかり整備され遺書の存在確認が取れる上に、遺書の内容についても信頼性が確保できる「公正証書遺言」が安心だと考えます。 「公正証書遺言」は公証人や証人への対価、保管に際して登録費用等の経費が必要になりますが、確実な遺言の実現のためには検討する価値はあると思います。 しかし、それぞれにお考えがあると思いますので、どの方法が良いか迷った時には行政書士等の専門家に一度相談してみるのが良いでしょう。 | 【遺言の方式のまとめ】 承認・立会者 筆者 署名・押印 日付 その他 普通の方式 自筆証書遺言 不要 ※成年被後見人は医師2名 本人 本人 年月日 ・ |
遺留分の問題 | Q:遺言を使えば、複数の相続人の中の1人だけに全ての財産を譲ることは出来ますか A:相続人には遺留分が認められているので、常にできるとは限りません。 「遺留分」とは、被相続人に属する遺産の一定割合について兄弟姉妹を除く相続人が請求できる相続分を指します。 原則「遺言の自由」により遺言者は遺言でどのように財産を処分しようとしても自由で、公序良俗等に反しない限り遺言の内容は有効ですが、ここで「遺留分」が問題になってきます。 相続人が配偶者、子供、父母の内、相続人が1人しかいない場合は全財産をその1人の相続人に譲ることが可能になります。 もし複数の相続人が居る場合、全ての遺産を特定の1人に譲ることは他の遺留権者の遺留分を侵害することになります。 この遺留分権者から「遺留分侵害請求」がなされれば、その遺留分侵害額の相当額を金銭で支払わねばなりませんので、実際には条件が合わない限り難しいと思われます。 | 各相続人の最低限の取り分を用意しておくもの ①遺留分権利者:兄弟姉妹を除く相続人 ※遺留分の放棄は相続開始前に家裁の許可が必要⇔相続放棄は相続開始前不可 ※一人が遺留分を放棄しても他の相続人の遺留分は増加しない ※遺留分を放棄しても相続を放棄したことにはならない ②遺留分の割合 遺留分権利者 相対的遺留分率 個別的遺留分率 ① 配偶者+子 1/2 配:1/4、子:1/4 ② 配偶者∔尊属 1/2 配:1/3、尊:1/6 ③ 配偶者のみ 1/2 1/2 ④ 子のみ 1/2 1/2 ⑤ 直系尊属のみ 1/3 1/3 |
遺言執行 | Q:遺言内容を円滑かつ確実に実現するにはどうしたらよいですか A:確実に遺言を執行するためには「遺言執行者」を遺言書の中で指定しておくと良いです。 遺言執行者は、遺言を実現する目的で相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」者です。遺言執行者が指定されている場合、他の相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為が出来なくなるので、円滑かつ確実な遺言の執行が可能になります。また、相続人にとっても様々な相続手続きを遺言執行者に一任できるので煩わしい手続きからも解放されます。 なお、遺言執行者を指名する場合、例えば遺言執行者を相続人代表者に、その代理権者として行政書士等の専門家が様々の煩雑な手続きをサポートする態勢を構築するのが望ましいと思います。 | 遺言の内容に従って遺言を実現 |